不動産クラウドファンディング投資研究所

サラリーマンを卒業した不動産鑑定士が、不動産クラウドファンディングに投資してみた

【船は不動産とどう違うの?】マリタイムバンクで船に投資

 

船に投資する、あたらしいクラファンが登場しました。

 

日本初の船舶投資型クラウドファンディング「マリタイムバンク」。これまで数多くのクラファンを見てきましたが「船」は初ですね。

 

マリタイムバンクは実際に渡航している(実在する)船舶を担保にして、外国船会社に資金を貸し付けるクラウドファンディング(第2種金商業のソーシャルレンディング)です。

 

→マリタイムバンク

 

いやー。船ですかー。

 

不動産のことなら普通の人よりは少しだけわかっているつもりですが、船のことはさっぱり・・・船の担保価値ってどうやって査定するんだろう?

 

その船を「新規に再調達した場合にいくらかかるか?」という資材価格からアプローチして価格を積み上げていく、不動産でいう積算価格のような感じになるのかな?

 

それとも船を貸しているなら不動産でいう「賃料」のようなものも発生するでしょうから、「貸したらいくらになるか?」という賃料収入を原資に査定する収益価格になるのかもしれません。

 

あるいはその両方からアプローチできるかもしれませんね。

 

いずれにしても、船は「動産の評価」にはなりそうですね。当たり前ですが不動産は動きませんから「不動産」で、船は動くので「動産」です。

 

余談ですが、例えば不動産鑑定では工場財団の評価では一つ一つの「動産」の評価をしていきますし、なんなら水族館の鑑定をする際はイルカやシャチといった「生き物」でさえも評価の対象になります。

 

その動産を新規に再調達した場合のコストに現在価値率を乗じて積算価格を査定していくわけです。ちなみに動産一つ一つ評価するので数が多いと大変です。

 

いつものごとく話がズレていきそうなので話を戻しますが、個人的にこれまで「船」の価値を評価したことがありませんので、マリタイムバンクに興味がわいてきました。

 

ということで、今回はまずは「船(動産)のことを知ろうー!」ということで、不動産と船を比較してみます。

 

●船と不動産の共通点

 

  • 船も不動産も担保(抵当権)が付く
  • 船も不動産もCFあり(船は用船料、不動産は賃料)
  • 船も不動産も売買市場が確立している(中古市場もあり)
  • 船も不動産も損害保険の対象になる

 

※用船料:船を船会社から借りるときに支払う借船料、船を貸し出す際に得る貸船料のこと。

 

こうして見ると船も資産性のある動産ですから、不動産と似てますね。ちなみにマリタイムバンクの案件は全て抵当権を設定しているようです。

 

また、もしもの場合に不動産は火災保険や地震保険などの損害保険がついてますが、マリタイムバンクの船も損害保険の対象となっています。

 

●船と不動産の相違点

 

  • 船への投資の認知度は低いが不動産の認知度は高い
  • 船はスクラップ市場があるが、不動産はない
  • 船の償却期間は13~15年、不動産(躯体部分)は35~40年
  • 船のアセットファイナンスはないが、不動産はある
  • コーポレートファイナンスは船も不動産もある
  • 船のリートはないが不動産はある

 

まずもって大きな違いは不動産は投資対象として市民権を得てますが、船に投資している人って・・・まずいませんよね。そういう意味でもマリタイムバンクは新たなチャレンジになりますね。

 

スクラップ市場については、不動産は基本的にむしろ解体費用の方が嵩むので、廃材がいくらで売れるのかももちろん考慮しますが、大きな市場になっているわけではありません。

 

一方、船では廃材はけっこう高く売れる(塩⽔の上でも耐えられる船の鉄は最⾼級の鉄スクラップとして電炉の製鉄所に売却可能)ようです。

 

あと、不動産は一般的に鉄骨なら30年程度、鉄筋コンクリートなら40年程度の償却期間がありますが、船は動産ですから不動産でいうところの設備に近くなるので、償却期間も短くなります。

 

償却期間が短くなると、その分、1年当たりの減価償却費が高くなりますから利回りが低くなりますね。

 

あと、アセットファイナンスとコーポレートファイナンスについては、先日記事にしたところですが、一部抜粋しておきますね。

 

「コーポレートファイナンス」と「アセットファイナンス」
 

そもそも資金調達の背景には、「コーポレートファイナンス」と「アセットファイナンス」という考え方がありますので、それをまず整理しておきますね。

 

コーポレート・ファイナンス
 

ざっくり言えば、「企業の信用力」をベースにお金を集めるのがコーポレート・ファイナンスです。借り入れ、株式発行などが代表的です。

エクイティに投資するクラファンも、ある意味コーポレートファイナンスに含まれるでしょう。

※不動産クラファンには別の側面もあるので後述します。

ちなみにコーポレートファイナンスではリコースローンがベースですから(企業全体の信用力をもってお金を返してねといえる)、返金は基本的には約束されています。

 

アセット・ファイナンス
 

一方、企業が持ってる「資産の信用力」をベースにお金を集めるのがアセット・ファイナンスです。

つまり、オリジネーター(不動産の原所有者)の信用力ではなく、不動産自体の信用力によって資金を調達する仕組みです。

アセット・ファイナンスではノンリコースローンが一般的ですから、配当は約束できません。

※ノンリコースローンとはつまり、お金をSPVに貸してSPVが倒産しそうになった場合、別の資産でお金を返してとは言えない仕組みのことです。不動産クラファンのようなSPVを使わない不動産投資商品もありますが、これも広義の意味で不動産証券化に含まれます。

 

不動産クラファンはアセットファイナンス?コーポレートファイナンス?
 

不動産証券化(不動産クラファンを含む)は、基本的にはアセット・ファイナンスに該当します。

アセット・ファイナンスとは言い換えれば、たとえ企業の業績が悪くても、企業が持っている資産だけを切り離してSPVに資金を調達させる仕組みですから、事業者は有利な資金調達ができますし、投資家にとっても優良物件に投資できるというメリットがあります。

企業がそのまま持っていた場合、企業の信用リスクも投資家が負わなくてはいけなくなるので、資産を切り離して(オフバランス)資産が生み出す収益力にのみ期待するのがアセットファイナンスです。リートがまさにそうですね。

ただ、不動産クラファンでは事業者の倒産リスクも投資家が負うことになりますから、厳密にいえばアセット・ファイナンスの要素を軸にしながら、コーポレートファイナンスによる資金調達にも該当するという位置づけになるのかな。

僕は不動産クラファンは両方の要素を含むと思うんですよね。

 

(引用)【代々木公園ファンド36億円完売】COZUCHIの集金力を紐解く

 

マリタイムバンクには船特有のリスクもあります。例えば「船が沈没したらどうするの?」とか。

 

この点はマリタイムバンクのホームページでリスクについて触れられてますので抜粋しておきます。

 

  • 船が沈没した場合には、保険金から出資金の回収を図るが元本が毀損する可能性あり。
  • マリタイムバンクから船会社へのファイナンスはドル建てで、投資家の出資金は円建てであるため、為替リスクが存在。

 

あとファンドの内容については会員登録しないとファンドの詳細までは確認できませんが(僕は今会員登録中です)、すでに運用中のファンドもありますね。

 

 

ちなみに「投資した船はどういう形で、どんな様子で、今どこにいるのか」などもマイページで確認できるようです。

 

具体的には、投資した船を3Dで見れる、詳しい写真、マップで運航状況を確認できるなど。

 

以上、今回は船と不動産という観点からマリタイムバンクをまとめてみました。

 

僕は「動産の評価」という観点から船の担保評価に興味があるので登録してみます。その結果はまたブログに書きますが、もしご興味があればのぞいてみてください。

 

→マリタイムバンク

 

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マリタイムバンク